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PRODUCTION CASE

制作事例

執筆者の写真大池建具店

エレキベース ピックガード復元

今回の依頼は建具でも家具でもありません。楽器です。




※半分仕事、半分趣味の製作記事です。友人からの依頼で、日々の業務では請け負っていない内容になります。ご了承ください。



昭和のエレキブームの頃、数多の楽器メーカー・ブランドが国内に誕生しました。まだエレキ楽器製造のノウハウが少なかったころに作られた、今見るとなんだか不思議で愛くるしい形のエレキギターはビザールギターやビザールベースと呼ばれています。生産数が少なかったり生産時期が短かったり、或いは群雄割拠の後にひっそりと歴史から姿を消したり……。




楽器的な良し悪しは置いておくとしても、今となってはいくらお金を積んでも手に入らない機種もあるそうで熱烈なファン・コレクターの方もおられるジャンルです。この記事を読んでいるそこの旦那さん!若かりし頃にチョロっと弾いてだけで押入で眠ったままになっているエレキ。もしかしたらお宝かも知れませんよ⁉




さて、今回依頼されたのは国産ビザールベース。友人である依頼主が長年探していた機種で、ネットオークションに出品されていたところをすかさず落札して手に入れたそうです。製造年代を鑑みればかなり良い保存状態だったのですがそのままでは楽器として心もとないのオーバーホールを決意。その一環として破損したピックガードの復元をお願いされました。さてさて……。




何が大変ってネットで検索をかけても数枚の画像が出てくるだけでスペックに関する情報がほぼ皆無なんです。幸い依頼主はメーカーを特定、連絡を取ってみたのですがあまりに古い機種のためサポート外。メーカーにも詳細な資料は残っていないようです。




その他、街の楽器屋さんやリペアショップに相談するも資料不足で見積もりが出すに出せない(つまり引き受けることができない)と断られ、いよいよ困って当店に持ち込まれたというワケです。何とかしてあげたいですが、私も図面資料がないことにはどこから手を付けたらよいものか悩みました。

しかしこの依頼主はへこたれませんでした。数少ない画像資料を元にピックガードの原寸図データを自作してしまったのです。こうまでされては期待に応えるほかありません。




まずは頂いた図面データをもとにテンプレート(加工のための定規)を作成していきます。A4サイズのコピー用紙にデータを印刷して……




MDFボードにスプレー糊で先ほど印刷した図面を貼り付けます。




貼り付けたら糸のこ盤でラフに切り出していきます。




切り出し終えたのがコチラ。





定規になるので断面の平滑と直角に気を付けながら、輪郭線まで削って整えます。ボディへの固定用ビス穴、ボリュームやトーンのポット穴、シールドを挿すジャック穴も同時に加工していきます。




こちらが件のベースボディ。アッシュ材でしょうか?国産だからセン??隣に置いてあるのが破損したピックガードとコントロール部。




作ったテンプレートに沿ってピックガード材を切り出し、面をとって、ペーパーで磨いて…

もともとのピックガードは今でも広く流通している樹脂製でしたが、せっかくなら木製にしてみたいとタモの突板ベニヤで作りました。なんとか復元することができました!

伝送系はまた別の友人にバトンタッチ。私のお手伝いはここまで。




最上段にも書きましたが、日々の業務では取り扱わない作業内容です。現在楽器の修理などは基本的に受け付けておりません。




……ですが。やはり誰かに喜ばれるモノづくりというのは冥利に尽きるものです。建具・家具以外の木工でもダメもとでご相談ください。じっくりと話し合って双方納得の上で着地点が見つけられれば、これほど素敵な結末はないよなぁと思います。

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